アンプは楽器か?

先日のリハで、スタジオに有ったのがAmpegのSVT-3PROで私はコイツがとっても苦手なのである。
抽象的な表現だが、基本的に硬い音でバズノイズが目立ち、かと言ってハイを切ると抜けない。
実際に演奏しながら構成の確認とかエンディングの打ち合わせだとかするようなリハならば、まぁ音がちゃんと出ればその用は足すんだけど、どうも...
リハが終わってそんな話をしていたらSaxプレイヤーが「へぇー、アンプで音がそんなに違うものなんですか?」と不思議そうにしている。
ギタリスト曰く、「全く違うし、気に入らないアンプだとテンション下がるんだよ」。
そうなのだ、エレクトリックベース、エレクトリックギターにとってアンプは必須だし出音への影響も大きい。
人によっては楽器の違い以上に影響すると感じている位重要な部分なのである。
こうなるともう”アンプは楽器の一部です”と言ってもいいんじゃないだろうか。
昔”メガネは顔の一部です”というコマーシャルがあったが正にそんな感覚だ。

ところで、ある程度以上の規模のライブだとギターもベースもPAで音量補強することになるが、この時にギターの場合はギターアンプの前にマイクロホンを立ててスピーカーから出た音を拾って調整卓に送るのが通例なのにベースはアンプにつなぐ前の段階でダイレクトインジェクションボックスという機器で二分割して一方はベースアンプに、他方は直接調整卓へ送ることになる。
ごく稀にベースアンプの前にマイクが立てられることもあるが、それは余程の有名ミュージシャンで大規模なコンサートを行うような場合だ。
つまり、ギターはプレイヤーの作ったアンプの出音がPAから出されるのに対してベースはプレイヤーの意思は反映されず、調整卓でPAさんが作った音が出されるということになる。
ということは、”アンプは楽器の一部”とは言いづらくなるのだ。
それ故にか、そういう状況へのささやかな抵抗なのか、自分でダイレクトインジェクションボックスを持ち込むプレイヤーも居る位だが、ハコによってはそれも拒否される場合があり、そんな時にはもう苦笑するしかない。
これには勿論ちゃんとした理由があって、ベースの出音に非常に低い周波数成分がという事情が大きく影響しており、だからこそ泣く泣くでも納得せざるをえないのである。
そもそもPAさんを敵に回したら良いライブは出来ないし。

そうなると、果たしてエレクトリックベースにとってアンプは楽器の一部なんだろうか?
だいたいあんな巨大で重いものをライブの度に持ち込むことはほとんど不可能なので、ある程度以上のライブだとハコ備付のベースアンプを使わざるを得ない。
有りもののアンプでちゃんと思い通りの音が作れるかということもプレイヤーの技術の一部だったりする...ということになる。
音作り前の段階でPAへ分岐されちゃうとは言え、中規模位までのライブならPAの出音とベーアンからの出音は半々位の比率で客席に聞こえてたりするからその努力はあながち無駄では無い。
PAからの音が半分ということを計算した上でそれと混ざって思い通りな感じになるようにセッティング出来れば良いんだろうけど...これがなかなか...