渾身の一枚

RESISTANCE

RESISTANCE

ベーシストの堀剛氏から記念にと言って頂いたのがこのアルバム。
堀氏はこのアルバムのリーダーミュージシャンである。
何より「自分の渾身の一枚で、これが出来れば死んでも良いという気持ちで作りました」という大切なアルバムを記念に下さったその気持ちがとても嬉しかった。
堀氏の弾くエレクトリックベースからはCD・ライブを問わずいつも正確でありながら実に心地よいグルーヴを感じることが出来て、私の好きなベーシストの中でもかなり上位のプレイヤーである。
実際ライブではそのグルーヴの秘密が知りたくていつも釘付けになる。
そんな尊敬するプレイヤーからのプレゼントなのでこれはもう隅々まで余すところ無く聴くしかない。

音楽に関わる者であれば自分の思いを込めたアルバムを作りたいという欲求が有るだろう。
それは実に自然な気持ちであり、堀氏の「死んでも良い」という思い入れも十分に理解できる。
自ら「渾身の」と言えるものを作るために費やす努力は果てしないものである。
「渾身」とは、ありとあらゆる事をやり尽くしてその時点の全力を出し切った自負が無ければ使えない言葉だと思う。
その努力とは音楽的な事にとどまらず、プロデューサー的なこと、資金面のこと...とにかくありとあらゆる事での苦労であった筈だ。

堀氏自らの談によればそういうことも含めて大変な作業だったようだが、アルバムからはそんな苦労話的な感じは無く、終始Happyでノリの良い音が心地よい。
終始一貫して正確で心地よいグルーヴと繊細なアーティキュレーションを感じることが出来るからあっという間にアルバム1枚を通して聴いてしまう。
さらっと鳴らしておいても良いし、ベース弾き的視点でじっくり聴きこんでも良い。
そんな幸福感に満ち溢れているのもこのアルバムが堀氏の「渾身」のアルバム故なのかもしれないと思った。