仕事帰りに草加にあるシュガーヒルという店で行われた仙道さおりhttp://www.c-a-s-net.co.jp/saoli/disc/index.htmのライブに寄った。
生ビールを流し込みながらタコライスを平らげた頃、店の入り口に黄色っぽい出で立ちのお嬢さんを見かけたのが彼女だった。
栗色のショートカットでどこかあどけない感じも有る、娘さんという印象だ。
その彼女が目の前に据えられたパーカッションのセットの前に座ると顔つきが変わったように見えた。
それは凛として気の強そうな、どこか近寄りがたくもあるミュージシャンのオーラを放つ姿だった。
正面にスネア、その向こうにボンゴ、左手にハイハット、更にその左後ろにコンガ、コンガの向こうには金やマメやウインドチャイムなんかの小物が掛けられたスタンド。
隠れて良く見えないが右手にもいろいろと小物が置かれているようだ。
そして、椅子にしているのがカホン
この日はアルカイックというピアノとのデュオのユニットで、静かに演奏がスタートした。
どの楽器の音色も濁り無く美しくて小さな音でも良く通る。
実に忙しそうに楽器を持ち替えて演奏しているのだけれども出てくる音のタイミングは超精密で音色選択のセンスも最高。
2種類のブラシ、3種類のスティック、マレット、そして指先、手のひら、そこから繰り出される音は繊細かつダイナミック。
金物の音は確かに金物の音なのに耳に刺さるようなキツさが微塵も無い。
ダイナミックレンジ=音の強弱幅が驚く程広い。
普通のスティックを使ってまるで紙を擦るようなピアニシモピアニシモから夕立がトタン屋根を叩くようなフォルテシモフォルテシモまで、ザーッというスネアのドラムロールを聴かされた時には鳥肌が立った。
こんなのは今までに聴いたことが無い。
この自由自在な強弱のコントロールから生まれる表現力で見事に音楽で風景を描き上げているんだと思う。スティックは絵筆、楽器が絵の具、ダイナミックレンジは明暗や遠近か。そして会場の空間全てがキャンバス。
ピアノの林正樹はものすごいテクニシャンでありながら表現力が有って、さらに遊び心もたっぷり。
仙道さおりとの息がピッタリ合っていた。
ちょっと訳アリで2ステージの1ステージ目しか見ることが出来なかったのが残念で仕方がない。
今度は是非とも時間をたっぷり作って見に行きたい。
いや、絶対にまた見たいと思わせられたステージだった。