レールサウンド

日本は何だかんだと言ってもやっぱり鉄道王国だ。
幼少の頃から鉄道が身近にあり、鉄道を舞台とした私的ドラマも数多く経験している。
だから鉄道が好きな人は多いと思う。
地方の私鉄に廃止話が持ち上がると必ず存続運動、廃止反対の旗揚げが始まる。
そもそも大赤字で地元の連中も乗らなくなったのだから交通機関の役割は終わっているのだし、必要とされていないのだから廃止もやむを得まい。
バスに転換すればお年寄りも通学利用者もそれで何も不自由しないのだから。
それでもエネルチーを使って反対するのはどこか鉄道を無くしてしまう事への後ろめたさが有るから、そしてその後ろめたさは日本人の鉄道に対するメンタリティーから来ているのではないかと思っている。
そんな風だから、やっぱり日本人は鉄道好きなのだ。
そして、特別に鉄道が好きで、趣味にしている人の数も国民の人口比率で見ると非常に多いのじゃないかと思う。
一言で鉄道マニアと言っても鉄道への接し方、つまり分野が沢山あり、それぞれにまたDeepなマニアが居る。
時刻表をめくって旅することを主体とし何度も全線乗り潰しそしている者、プロカメラマンもビックリの写真機材を担ぎ山登りも厭わない「鉄道おたく」というイメージにそぐわぬタフガイ、真鍮の板一枚から手作業で複雑な造形の蒸気機関車を組み上げてしまう職人、車両の事なら知らない事がない歩く鉄道大辞典...とにかくその道の求道者はスゴイよ。
そんな中ですご〜くマイナーな分野が有る。
それが鉄道の音を録音するという分野。
ビデオ映像を撮る訳ではなく、ただ単に音声のみを録音するために全国行脚する訳だ。
このナマロク分野もいくつかの流派が有って...
・車内で走行音を録る
 始点から終点まで全線録らないと気が済まない
・駅のアナウンスや車内放送をひたすら蒐集する
 自動アナウンスの内容やメロディーが変更になるとすっ飛んで行く
・モーターや制御器から発生する音を蒐集する
 制御プログラムやパーツの変更による音の変化まで追求している
こんな感じだろうか。
求道者だから「そこまでするか??」って位にとことん追求するのがマニア。
私なんざ恥ずかしくてとても「マニアです」なんて言えたもんじゃない。
そもそもの発想が、「夜寝る時に好きな鉄道の車内の音がBGM的に小さく流れていたら気持ちいいだろうなぁ」というとても志の低い所から始まっていて、その志レベルは今でも殆ど上がっていないのだから。
それでも山陰、能登、下北、紀州なんかにDAT担いでわざわざ録りに行った。
バッカじゃねぇのと言われればそれまで...ってのは承知の上だ。
で、近年はもう録りたいと思える鉄道が殆ど無くなってしまった。
プチ寂しい気もする。