キハ58

キハ58

唐突だけど、鉄道車両の中でもこれが一番好き。

キハ58型は丁度自分が生まれた頃に登場した国鉄の急行列車向けの気動車だ。
その時代はとにかく日本全国の人と物の流れを大きく鉄道に依存していた。
高速道路なんか無いに等しいし、国道だって昔の街道をなぞった貧弱なものだ。
今とは比べものにならない位自動車が少なかったにもかかわらず市街地では年中渋滞していたし、2桁国道なんかまだ未舗装の道路がいっぱい有った。
そんな時代だから電化されていない区間での蒸気機関車が牽引する客車列車をディゼルカー、すなわち気動車に置き換えて輸送効率を上げることが急務だった。
できるだけ安いコストで大量生産出来てメンテナンスが楽で故障しない気動車が求められることになる..そんな背景の中登場したのがこのキハ58型。
エンジンは昭和一桁世代のDMH17系列で弱冠のパワーアップをしたDMH17H型を床下に2機抱いた。それまでの気動車だとピストンが上下方向に動くような置き方をしていたが、DMH17H方はピストンが水平方向に動くような置き方をする。
1台が定格出力180PS/1500RPMだから1両あたり360PSになる。

このキハ58型はあっという間に増備され、日本中の悲電化路線に広まったから日本全国何処へ行っても見かける、とても当たり前な存在だった。
国鉄当時は車体の塗装も標準化されていたから九州へ行っても北海道へ行ってもあのクリーム色にオレンジの塗り分けなのだ。
だから余計に「当たり前な存在」という感覚が強かったんだろう。
自分が年齢を重ねる課程でその背景にあたりまえに居た存在なのだから、何となく親近感が有るし今となっては一緒に生き抜いてきた同士みたいな感情も有る。

で、この気動車は実は「音」が良い。
非常に設計の古いエンジンだったが、防音に気を遣っていた事と、シリンダーを横向きにしたことで当時最新型のエンジンよりも静かだった。
また、その音質も角の立った耳に痛い成分が無く、まろやかで心地よい。
更に2エンジンであるために加速時には各エンジンの微妙な回転数の差がゆらぎを生みだした。
おっとりとした加速のテンポも、せいぜい90キロ程度しか出ないのんびり感も現代の気動車には無い癒し効果を持っている。
だからこの気動車が好き。