季節の無い街

季節のない街 (新潮文庫)

季節のない街 (新潮文庫)

貧民街を舞台とした物語が15。
みんなどうしようもなく貧しいのだけれども心豊かに生きている。
幸せって何だっけというCMが有ったけど、この小説を読むとそんな気持ちになる。
中学生の頃だったか、気まぐれで長編小説を読んでみようかと思い立ち、親戚の土蔵で埃にまみれていた「樅の木は残った」を読み始めた。
沢山の登場人物と時代背景に面食らいつつもどんどん話の世界の中へ引きずり込まれ、読み終わった後には大きな溜息が出た。
そうか、この溜息が長編小説を読むことの醍醐味であり、快感なんだなと思って「長い坂」や「虚空遍歴」も読んだ。
気が付くと、ほとんどの周五郎作品を..というか、山本周五郎ばかりを読み漁っていた。
樅の木は残った」は、そんなかなり偏った小説遍歴のスタートとなった思い出深い作品なのである。

でもやっぱりこの1冊が一番好き。
持ち歩きやすいしね。