軽自動車生産終了

今まで戦闘機を作って来た航空会社は敗戦の後に作るものが何も無くなってしまい、そんな時に倉庫に会った戦闘機の尾輪でスクーターを作り始めたというのが富士重工業の戦後のはじまりだと聞く。
当時にしてみれば「軍用機作ってます」というのはハイテク最先端の産業であったのに、乳母車作りみたいなローテク産業でしのぎながらの模索の中から生まれたヒット作、ラビットスクーターである。
その後、日本のモータリゼーションの発展におおきく寄与したのがスバル360/スバルサンバーという軽自動車。
排気量わずか360cc、そんな小さなクルマなんてほとんど作られていない、あってもせいぜい近所の配達とかリヤカーに毛が生えたような程度の車両でそれで長い距離を走ろうとか山を越えてドライブへ行こうとかそんな期待はされていなかった時代に「小さな自動車」の規格で立派な自動車を作り上げるのは並大抵の努力ではなかったろうと思う。
バルサンバーは後ろの車軸のさらにその後ろ側にエンジンを積み、後輪を駆動するRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式。
スバル360のRRユニットが流用できるという事情もあっただろうが、急峻な山道を行ったり来たりするみかん農家では空荷時にもしっかりとタイヤに力が伝わるRR方式は「カミさんを荷台に乗せなくても大丈夫」と重宝されたのだそうだ。
この自動車メーカーが作る製品にはエンジニアリング的に「面白さ」とか「こだわり」を感じる。
そういった技術者魂のようなものはどこのメーカーでも有るのだろうが、営業戦略的なものもあってかなかなかストレートには感じにくいものだ。
いや、商品としてはむしろそういった個性を抑えた方が完成度の高いモノづくりであると言えるのかもしれない。
ユーザーに理解されて大ヒットとなったのがレガシイ、理解されずに空振りだったのが軽自動車のR2である。
みんなが軽自動車に見た目の豪華さ、広さを期待しているのにR2は豪華じゃなければ広くも無かったしデザインも奇抜な感じだった。
営業的には失敗だったのだろうけど車は決して失敗作では無くて、静かだし乗り心地は良いし小さいくせに安定感があるし良い車だったと思う。
今ではどのメーカも作らないコスト的に不利な四輪独立懸掛方式のサスペンションや4気筒エンジンの軽自動車が生産終了となったのは非常にさびしかった。
そして先日、富士重工から最後の軽自動車がラインオフした。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120228-OYT1T01201.htm
富士重工は軽自動車から撤退するのだそうな。
考えてみればこの狭い日本、たった1億2千万の国民相手に自動車メーカーが10社近くもあるというのは異様なことで、その全てのメーカーが軽自動車から大型高級車までフルラインナップで生産するのは無理な話で生産車種を絞って特化するのは仕方がないが唯一無二の存在だった4独4気筒の軽が完全消滅するのはいかにも残念だ。